#34「網膜剥離の手術」

おかやん

やっと入院

ズバッと血が出てからどれくらい経ったか忘れるほどだった。

翌年の4月くらいにやっと手術をすることになった。

夫は病院嫌いなのとそこそこ健康だったのもあって、

入院も手術も人生で初めてだということで、

わりと(というかかなり)びびりちらかしていた。

そういえば、入院前の忘れられないエピソードがある。

私たちは映画好きだったので、

入院前の気晴らしにと、持ってたDVDの中から適当に選んで映画を観た。

それは「マイノリティ・リポート」

トム・クルーズ主演のスピルバーグ監督の映画ね。

ウチは「とりあえず映画やったらなんでもええか」

と思ってたんだけど、

この映画の中で目を手術するワンシーンがあったのだ。

それがまた恐怖をあおるような、こう、描き方が「うえー」となる感じで。

夫を更に鬱にさせてしまったという。

最後まで観なかったというか、観れなかった。

途中で映画観るのをやめて、

ずっとため息ついていた。

まぁ、正直言うてうっとおしいほど落ち込んでいた。

逃げたかっただろうなぁ、と思う。

たぶん、ウチの存在がなければ放置しただろう。

それくらい嫌がっていたし、怖がっていた。

なだめすかして、どうにか重い夫を励まして、

「2週間で終わるから!」

と言って入院させた。

そう。網膜剝離の手術は普通、2週間で退院できる。

だから送り出せた。

そうは問屋がおろさないところが、

糖尿病の怖い所だ。




手術日

入院した翌日、手術になった。

ウチは会社を休んだ。

待合室で手術が終わるのを待っていた。

2時間?くらいやったかなあ。

広島のなかなかの名医らしく、

網膜は眼球の中でくっしゃくしゃに丸まっていたと、

のちに夫から聞いた。

くしゃった網膜を丁寧に広げて、

眼底に貼り付けて、

レーザーで留めた……っけ?

レーザーは忘れたけど、とにかく広げて、貼って、中にガスを入れて、

眼底にくっつくまでひたすら下を向いて過ごす、という手術だ。

下向きが上手くいかないまま過ごすと、

網膜がしわったりよったりして、

像がぼやけたりするらしい。

なので網膜剝離の手術は、手術そのものより、

その後の下向き生活がどれだけちゃんと出来たかで

見え方が決まると言っていい。

2週間後にそのガスを抜いて、

眼底に網膜が貼りついていれば退院となる。

そして、糖尿病患者はそのあたりが上手くいかないことが多い。

だって糖尿病だから。

当然、一回目の手術では貼りつかなかった。






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アラフォー主婦のノンフィクション雑記ブログ
21歳で駆け落ちした経歴を持つ、現在39歳の未亡人です。 このブログが多くの人に読まれ、亡くなった夫のことを私以外の誰かにも知って欲しい。
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