#25「敷金礼金不要の21」

前回の復習
駆け落ちしたのはいいが、その日泊まったホテルが古かったため、散々な思いをした私たち。
もうホテルは嫌だと不動産で家を探そうとするが、職がないため鼻で笑われ、門前払いを食らった。
不動産で家を見つけるのは難しいと悟った私たちが、次に行った場所とは……?
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2件目の不動産は諦めた。
私は途方に暮れたが、夫はそれを予想していたのか、こう言った。
「レオ〇レスならどうにかなるかもしれん」
私はレオパレスという名前しか知らなかった。
正式名称「レ〇パレス21」
なぜに21。
まぁ、家から出たこともない、わりとぬくぬく過保護に育ったモンだから、そういう世間を全く知らない学生だから、仕方ないともいえる。
敷金・礼金なしで(今ならそれの理由も分かるのだが)、家具付きもあるというレオパレ〇。
他に行くところもないし、とにかくホテルは嫌だったので、私たちはレオパ〇スを探すことにした。
2
都会っぽい場所に出ればどうにかなると思って。
広島市を目指していたら、市内に入ってすぐくらいにレオパを見つけた。
わりと分かりやすい場所にあった。
早く早くと車を停めて、開店時間になったばかりの店に入った。
案内された椅子に座って、「どういった家をお探しですか?」と聞く相手に、ハラハラしながら話を切り出す。
「まだ職が決まってないんですが……」
次の一手はもうなかったから、この時の夫はきっと怖かったのだと思う。
「あ。大丈夫ですよー」
なんでもないように、レオパの人は言った。
家が借りられる!と私たちは内心、狂喜乱舞していた。
3
どこでもよかった。
家が借りられるという事実だけで、ものすごく安心した。
もうホテルで寝なくていいのだと嬉しかった。(一晩だけなのにトラウマになっていた)
「広島に来たばかりでよく分からないんですけど」
と言って、向こうがとあるレオ〇レス賃貸マンションを提案してきた。
「ここにします」
私は即決した。
驚いたのは夫だ。
「ちょ、おま、待て。まだ待て。とりあえず一回内見してから決めよう!」
「えー?」
めんどくせぇ。
入れる家があるんだからどこでもいいじゃん。
内見、いる?
そもそも内見ってなんや?
と思った私は本当に無知でおバカな21歳やった。