#16「お付き合い期間」

前回までの復習
アルバイト先で、店長の部下2人と肉体関係を持った私。
ちょっとした会話からそれを店長が知っていたと分かり、意を決し相談してから乱れた関係を清算した。
そして店長と毎日のメールを経て、1か月後、無事店長(未来の夫)と付き合うことになった。
だけども、店長も妻子のいる身。
そんな不倫関係にあった私たちのお付き合いとはどんなものだったか。
今回はそんなお話。
人生で一番幸せなとき
「恋愛」って「恋人」している時が一番幸福なんだと思う。
そういやこないだ観た朝のテレビでも言ってたな。
結婚前に旅行に来ているカップルを指差して「一番楽しい時だ!」って。
うん。確かにそうだと思う。
「恋愛」って「結婚前」が人生の絶頂な気がする。
とはいえ、必ずしもそうとは言い切れない瞬間はあった。
結婚して良かったと、幸せだったと、どんな相手にだって胸張って言えるほどに、夫はいい男だった。
恋愛している間って感情の振れ幅が大きくて、良くも悪くも楽しい!
会っているときはこれ以上ないほど幸せなのに、
離れるときは尋常でないさみしさと苦しさが常に付きまとう。
店長と付き合ってる時、私はまさにそうだった。
1分1秒でも離れることを惜しんだ。
この先もずっとずっといっしょにいられたらと、当時どれだけ願ったことか。
あの時の感情はまだ忘れられずにいる。
不倫関係にあった私たちがゆっくり会える場所なんてラブホテルしかなくて。
そういう立場だったことに何とも言えないじれったさを感じていた。
それでも、今思い返しても、当時は色々つらかったのに、やっぱり幸せだったな。
私の周りには「振り回されるのがしんどい」と言って、異性とお付き合いをしない選択をする人も多いんだけれど。
私たちの関係は、世間的には後ろめたくても、互いへ向ける想いは、ただただ真っ直ぐで純粋だった。
それだけは確かに断言できる。
生涯忘られぬ想い出よ
人の目を盗むように、21の頃の私はカツラをかぶり、変装をして店長とデートしていた。
実際、店長の知り合いに一緒にいる所を見られたこともあったっけな。
パッと見で「私」と特定できないカッコをして、難波の雑踏を腕を組んで歩いた。
この時の想い出が、現在大阪で生きる私の心を支えてくれている。
……どうしようもない空虚感と共にではあるけれども。
時間と立場の関係で、二人で会うのはラブホテルが多かったけれど、焼肉屋がお休みの日なんかは、彼は私を色んな場所へ連れ出してくれた。
それでも、
「周りから見れば私たちはどんな関係に見えるんだろう……やっぱり不倫っぽいのかな……」
この頃……本当によくこんなことを考えていた。
夢と現実
結婚は現実の連続だ。
特にお金という問題が重くのしかかってきて、常に頭を悩ませてくる。
でも恋人期間の時って、ただただ夢を見ていられる。
だからって私は、この頃に戻りたいとは思わない。
まだ味のするガムをしがむように、結婚前特有の幸せの噛みしめたいとは思わない。
だって私は、こんな私をパートナーとして愛してくれた彼を心から尊敬し、いまでも愛しくて愛しくて仕方がないからだ。
お付き合いの時に抱く感情を「恋」と言い、結婚してから相手に抱くこの愛しさを「愛」と呼ぶのだろう。
当時の夢のような現実があるから逃げ出したいような現実に向き合えたし、
現実に生きてるからあの時の夢を大事に思える。
うーん。私の言いたいこと、伝わるやろうか?
とにかく、この幸せな時間があって良かったなぁと言いたいのだけれど。
人は夢だけでは生きていけないし、
だからって現実だけを見つめていたら気が滅入ってしまう。
私はいいバランスで彼と出会い、時間を共にすることができた。
変装して会ったことも、
別れがつらかったことも、
デートが楽しすぎたことも、
付き合う前がつらかったことも、
すべてが私たちの仲を深めてくれたと思っている。
今も昔も、私はずっと幸せでしかない。
幸せは長くは続かない
あちこちに行けたお付き合い期間は、たった3カ月しかなかった。
蜜月は唐突に終わりを告げられる。
キッカケは、浮かれていた自分たちのせいという。
次回はその時の話をしたい。