#3「面接」

初対面
そんな風にして約束をとりつけて。
電話してから一週間も空いてなかったと思う。
お店に入って、バイトの面接に来たことを伝えて、宴会用の二階席があったから二階に上がって待っているように言われて、面接を受けた。
その時の私は……まぁ恥ずかしいほどに常識というか、普通のマナーっていうものに疎い常識のない女子大生でな。
上座に座って待ってたわ。
バイト先の店長……つまりそれが未来の夫なわけだけど、ドアを開けていきなり目が合うというね。
そのことに内心「え?」と当時の夫は思ったらしい。
軽く引いたって感じ?
高校生ならまだしも、大学生だもんな。
ちなみに私はといえば、そんなこと知らないものだから普通に会釈したわ。何が悪いとも思っていない、ごくごく普通に「アルバイトの面接に来たおかやんです」とか言ってね。
で、彼は少し驚きつつもそれを表情に出すこともなく面接をしてくれた。
とはいえ、内心「大丈夫かな、この子」と思ってたらしい。
いえ。全然大丈夫ではありませんでした(笑)
そこから数々の若さゆえ無知ゆえの恥の上塗りを何度もしていくことになるのだけけれど「書きたくないねぇ~!」と思うくらいにはたくさんやらかしてきた。
でもこれ読んでる人は知りたいわな? 知りたいはずだ。
人の失敗談は耳をダンボにして聞きたいはずだ。
だってみんななにかしらやらかしてきてるはず……よね?
さっきのこと以外でも色々あるんだけど、その中でも一番「やっちまったなぁ!」って思ってる出来事が(コレ本当に言いたくないなー……)
やらかしたこと
まぁ、当時の夫って店長なわけやん?
その店で一番エラい立場にあるわけやん?
雇って一週間後くらいって言ってたかな? 私は覚えてないんだけど。
ある日。
店長である夫との職場での雑談の折、どういう流れかはさっぱりわからないのだけれど、夫が何か言ったその返答に、私が
「ふーん。君ってそういう考え方なんだ~」
と言ったらしい。
店長に向かって。
いや「君」て。
なによ「君って」てその言い方。
「そういう考え方なんだ~」て、ちょっおま。
私はいったい何様だッ?!
しかも私ってばまったく覚えてないからよっぽど素だったんだろうね。当時。
店長もその場にいた人も私以外全員ドン引きよ。
付き合ったとき、その時のこと何べん言われたか。
「とんでもない子雇ってもうたかもしれん」って思ったらしいし(笑)
ハイ、すみません。本当に本当に常識のない子だったんです。
そんな19歳だったんです。
しかもなぁ、やらかしてるのはそれだけじゃないんよ。
おかやん、面接直前まで遊び倒す
夏だった、っていうのは忘れようがなくて。
なぜならばその日の昼に部活のみんなとプールで遊んだ記憶とセットだから。
部活の人らと部活動以外で会うのって、何気にはじめてのことやったから、またそれもよく覚えているんよね。
もう20年も昔のことになるけど。
場所は忘れたけど、大阪のちんちん電車がまだ走ってるところだった。
こんな乗り物まだあるんだ~って思って、それに乗ってみんなで行った屋外プールでね。
私はあんまり日焼けとか気にするタイプやないから、日焼け止め持って行ってなくて。
その日一日で肌が真っ赤になるくらい焼けたのよ。
当然、皮も剥けるくらい。
面接時、不自然なほどに日焼けしている上に、上座に座っているっていうね。
しかも私、遊びに行ったもんだから面接当日コンタクトで。
持って行った履歴書もたまたまメガネない状態(メガネが通常モード)の証明写真を使っていて。
初出勤の日、メガネで来たから当時の夫、びっくりしたらしい。
「あ、あれ? メガネしてる……?」
「あ、はい。いつもこうです」
「でも面接のときしてなかったよね?」
「あー。あの時は、たまたま」
「履歴書の写真もメガネしてなかったと思うけど……」
「そういえばそうでしたね」
「…………」
こんな感じの会話、したと思う。っていうかしたわ。
実際バイト先にコンタクト着けて出勤したことってほっとんどなくて。
履歴書も面接時もコンタクトしてたもんだから、初出勤の日は「おいおい、話と違うやろ」って思ったらしい。
のちにね、こう言われた。
「もしあの時お前がメガネかけたまま面接してたら、バイト落としてたかもしれん」
いや、メガネ一つで落とすんかーい!
言われた時は思ったけど、なんか当時よっぽどいろいろガッカリさせたらしい。
まぁね、写真と違ったのは事実なわけだしね。
彼、実はメガネっ娘があんまり好きでないのだ。
それを知ったのは駆け落ちしてからだったわけだけど。
色んな要因が重なって、結果、すれ違うだけの人にならなかったのだから人の縁とは本当に不思議なものだと思う。
出会えたことそれ自体が奇跡、なぁんて歌詞によくあるフレーズやけどさ。
実感を伴って「本当にそうだ」と言えるのだから、私はあの人と出会えただけめちゃくちゃ幸せ者だ。