#18「失態」

前回の復習
大学4回生という大事な時期を、店長とのデートに費やし、卒業も危うかった私。
そんな幸せ絶頂の中、浮かれた私たちに鉄槌が下るときが来たのだ……。
最高のデートの次の日に
6月1日のバイトでのことだ。
私のバイト先は焼肉屋だから、水曜・木曜はあんまりお客さんが来ない。
だから必然的に仕込みデーになる。
社員さんは慌ただしく肉を切ったり、キムチを作ったり、ハンバーグを焼いて冷凍したりしていた。
飲食店の仕込みは多い。
かくいう私も、玉ねぎの皮を剥いたり、ニンニクの皮を剥いたりしていた。(余談だが、私はこの作業がアルバイトの中で一番早かった)
アルバイトがそういう作業する場所は、だいたい決まっているのだが、まぁ……店長の計らいというか、スペースが開いていたので彼の真後ろで私はニンニクを剥いていた。(単に私欲ともいう)
いつもなら誰かしら厨房にいるのだが、たまたまその時は皆出払っていて、見える場所には私と店長しかいなかった。
会話は自然、昨日のデートのことになった。
浮足立ちたる危うさに
本当にたまたまなのだが、誰も厨房に戻ってこない時間が続いた。
一時間くらいは二人きりだった。
節度のある人だから、いちゃいちゃしたりはしてこないけれども。
お互い、ひたすら仕事で手を動かし、仕事をしながら、会話をしていた。
周りに誰もいなかった。
そう、目に見える範囲は。
一緒に仕事をしている、店長の部下たちは。
でも、物陰に隠れてずっと会話を聞いている人がいたのだ。
──社長だ。
店長は雇われだったので、「本部」という元締めの酒屋がその店の権利を握っていた。
私たちはよりにもよって、一番知られてはいけない人に、最悪の形でバレたのだった。
運命の日
馬鹿だなって、今でも思う。
軽率だった、って。
足の浮かれ、気の緩み……人はこうやって油断するのだと身を以って知った。
職場にプライベートや秘密を持ち込んではいけないのだ、とこの日、私は学んだ。
とはいえ、もうなにもかもが遅すぎたけれども。
「話がある。ちょっとこい」
と、私たちの前に姿を現した社長は、店長を2階へ呼び出し、店長はそのまま2時間戻ってこなかった。
解放されたとき、彼はひどく落ち込んでいた。
怒られた内容は知らなくても、内容はなんとなく見当がついた。
その日の夜だ。
店長に「一緒に逃げよう」と告げられたのは……